【徹底解説】日成ビルド工業の評判・年収・働き方|上場廃止の理由と今後の将来性

「日成ビルド工業」という名前を聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。システム建築のパイオニア、あるいは「カレス」ブランドの立体駐車場メーカーとして、業界では確固たる地位を築いています。しかし、2022年にMBOによる「上場廃止」を選択したことで、「何か問題があったのでは?」と気になっている方もいるかもしれません。また、就職や転職を検討する上で、その評判や年収、働き方の実態も知りたいところです。

日成ビルド工業は、堅実な事業基盤を持ちながらも、大きな変革の時期を迎えています。この記事では、同社の事業内容から、気になる評判、年収の実態、そして上場廃止の真相まで、詳しく解説していきます。

この記事でわかること

日成ビルド工業とは?(事業内容と強み)

日成ビルド工業は、工場や倉庫、店舗などの建設において独自の地位を確立している企業です。特に「システム建築」という分野のリーディングカンパニーとして知られ、さらに私たちが日常的に目にする「立体駐車場」の分野でも高いシェアを誇っています。この会社がどのような技術を持ち、社会にどのような価値を提供しているのか、その根幹となる事業内容から紐解いていきましょう。建築業界の中でも、特に「工期短縮」や「コストパフォーマンス」が求められる領域で、日成ビルド工業の技術力は高く評価されています。

主力事業「システム建築」のパイオニア

日成ビルド工業の中核をなすのが「システム建築」事業です。これは、工場、倉庫、物流施設、店舗といった非住宅分野の建物(特に低層の鉄骨建築)を対象とした建築工法を指します。システム建築の最大の特徴は、設計から部材の生産、施工に至るまでの全プロセスが標準化・システム化されている点です。

これにより、従来工法(在来工法)と比べて、大幅な工期の短縮とコストダウン、そして安定した品質を実現します。日成ビルド工業は、この分野のパイオニアとして長い歴史と豊富な実績を持ち、独自のノウハウを蓄積しています。耐震性や耐久性にも優れた建物を提供できる技術力が、同社の強力な基盤となっています。

「プレハブ建築」との違いは?

「システム建築」と聞くと、「プレハブ建築」と同じものだと考える方もいるかもしれません。しかし、両者には明確な違いがあります。プレハブ建築は、あらかじめ工場で生産された画一的な部材(壁パネルや床など)を現場で組み立てる工法を指すことが一般的です。比較的簡易的な建物や、小規模な事務所などに用いられるケースが多く見られます。

一方、日成ビルド工業が手掛けるシステム建築は、プレハブ建築よりも大規模で、より自由度の高い設計が可能な「鉄骨建築」です。建物の形や大きさ、柱の位置など、顧客のニーズに合わせたオーダーメイドの要素を取り入れつつ、主要な部材(鉄骨フレームや屋根、外壁など)は標準化されたコンポーネントを使用します。プレハブの「手軽さ」と、在来工法の「自由度」の“いいとこ取り”をした工法がシステム建築であり、特に大規模な工場や倉庫など、高い強度と広い無柱空間が求められる建物でその真価を発揮します。

項目システム建築(日成ビルド工業)プレハブ建築(一般的)
主な構造鉄骨造軽量鉄骨造や木質パネル造など
得意分野工場・倉庫・店舗など大規模空間仮設事務所・小規模倉庫・住宅
設計自由度比較的高い(オーダーメイド対応可)規格化されており低い傾向
工期短い非常に短い

国内トップクラスの「立体駐車場」事業

日成ビルド工業のもう一つの柱が、立体駐車場事業です。同社は「カレス(CALES)」というブランド名で、自走式の立体駐車場(ドライバー自身が運転して駐車するタイプ)の製造・販売・施工を行っています。商業施設や病院、駅前など、都市部の限られた土地を有効活用するために、立体駐車場は不可欠な存在です。

日成ビルド工業の強みは、システム建築で培った鉄骨技術と生産能力を応用し、高品質かつコストパフォーマンスに優れた立体駐車場を提供できる点にあります。設計の自由度も高く、土地の形状や必要な収容台数に応じて最適なプランを提案できます。この分野においても国内トップクラスのシェアを誇っており、私たちが普段利用しているショッピングモールの駐車場なども、実は日成ビルド工業が手掛けたものである可能性は高いです。この安定した事業基盤が、会社全体の経営を支えています。

日成ビルド工業の評判・口コミ(働き方と製品)

会社の実力を知る上で、外部からの評価や内部で働く人々の声、つまり「評判」は欠かせない指標です。日成ビルド工業は、システム建築のパイオニアとして高い技術力を持つ一方、働き方についてはどのような実態があるのでしょうか。転職や就職を考える上では、給与だけでなく社風や労働環境も重要な判断材料です。ここでは、口コミサイトなどから見えてくる「働き方」の評判と、同社の「製品・サービス」に対する市場の評価を分けて見ていきます。

働き方に関する評判(残業・社風)

日成ビルド工業の働き方に関する評判を見てみると、ポジティブな面とネガティブな面の両方が存在します。多くの口コミサイトで共通して指摘されるのは、部署による労働環境の差が大きいという点です。特に、現場の施工管理や設計部門では、工期前の繁忙期を中心に残業時間が多くなる傾向があるようです。「激務」と感じる声がある一方で、残業代はきちんと支給されるため、その分給与に反映されるという意見も見られます。

社風については、「堅実」「真面目」といった評価が多く、古くからの日本企業的な体質が残っていると感じる人もいるようです。一方で、MBO(後述)などを経て、経営のスピードアップや変革を目指している最中でもあり、徐々に社内の雰囲気も変わりつつある可能性があります。営業部門や管理部門では、比較的ワークライフバランスが取りやすいという声もあり、配属先によって大きく環境が異なるのが実情のようです。

製品・サービス(システム建築)の評価

日成ビルド工業の主力製品である「システム建築」や立体駐車場「カレス」に対する市場や顧客からの評価は、総じて高いものがあります。システム建築の分野では、「品質の高さ」と「工期の短縮」が最大の強みとして認識されています。工場や倉庫を建設したい企業にとって、予定通りに、かつ高品質で建物を完成させられる信頼感は非常に重要です。

日成ビルド工業は、この分野での豊富な実績とノウハウを持っており、「安心して任せられる」という評価が定着しています。また、コストパフォーマンスの面でも優れています。部材の標準化と自社工場での一貫生産により、在来工法に比べて建設コストを抑えることが可能です。立体駐車場「カレス」についても、耐久性や使いやすさ、そして土地の形状に合わせた柔軟な設計対応力が高く評価されています。これらの製品力が、長年にわたり同社が安定した業績を維持してきた大きな要因と言えるでしょう。

気になる年収と福利厚生の実態

企業を選ぶ上で、やはり「年収」や「福利厚生」は最も気になるポイントの一つです。日成ビルド工業は2022年に上場を廃止したため、最新の有価証券報告書などで平均年収を正確に知ることは難しくなっています。しかし、過去のデータや口コミ情報から、その水準や給与体系、そして社員を支える制度について、ある程度の実態を推測することは可能です。ここでは、上場廃止前のデータと口コミを基に、同社の給与事情と福利厚生について探っていきます。

平均年収と給与体系

日成ビルド工業が上場していた2021年3月期の有価証券報告書によると、従業員の平均年間給与は約630万円と記載されています。これは、当時の上場企業(建設業)全体の平均と比較しても、遜色のない水準と言えるでしょう。もちろん、これは全従業員の平均であり、年齢や役職、そして前述の残業時間によって、実際の支給額は大きく変動します。

口コミなどを見ると、給与体系は基本的に年功序列の要素が強いようです。安定して昇給していく一方、若いうちから大幅な給与アップを狙うのは難しいかもしれません。ただし、施工管理や設計などの技術職は残業時間も多めになる傾向があり、その分の残業手当が上乗せされることで、同年代の他業種と比べて高い給与を得ているケースもあるようです。賞与(ボーナス)も業績に応じて安定的に支給されていた実績があります。

福利厚生と社内制度

福利厚生に関しては、建設業の大手企業として標準的な制度が整っていると言えます。各種社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)はもちろん完備されています。また、退職金制度や財形貯蓄制度、社員持株会(上場廃止に伴い変更の可能性あり)なども整備されていました。

特徴的なのは、全国に支店や営業所、工場があるため、独身寮や社宅制度が充実している点です。特に若手社員や転勤者にとっては、家賃負担を抑えられるメリットは大きいでしょう。ただし、建物の新しさや設備は拠点によって差があるようです。休日に関しては、カレンダー通りの土日祝休みに加え、夏季休暇や年末年始休暇が設定されています。ただし、施工管理部門などは、工期の進捗によって休日出勤が発生し、後で振替休日を取得するケースもあるようです。

福利厚生の例制度の有無(傾向)備考
社会保険完備健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険
寮・社宅あり独身寮・社宅制度(全国)
退職金制度あり確定給付年金など
財形貯蓄あり
休日休暇週休2日(土日祝)夏季・年末年始休暇あり(部署により休日出勤・振替あり)

2022年「上場廃止」の理由と今後の展望

日成ビルド工業の近年の大きなトピックとして、2022年4月の「上場廃止」が挙げられます。長年、東京証券取引所スタンダード市場(旧東証二部)に上場していた同社が、なぜ非公開化の道を選んだのでしょうか。この決断は、ネガティブな理由ではなく、むしろ将来に向けたポジティブな戦略的判断によるものでした。ここでは、上場廃止に至った背景である「MBO」の経緯と、非公開化によって何を目指しているのか、その狙いと今後の展望について解説します。

MBO(経営陣による自社買収)の経緯

日成ビルド工業の上場廃止は、MBO(Management Buyout:経営陣による自社買収)という手法によって行われました。これは、会社の経営陣が、投資ファンドなどと協力して自社の株式を既存の株主から買い取り、株式を非公開化すること(上場廃止)を指します。日成ビルド工業の場合、2021年11月にMBOの実施が発表され、株式公開買付け(TOB)を経て、2022年4月に上場廃止となりました。

このMBOは、経営陣が「短期的な株価や業績に左右されず、中長期的な視点に立った経営改革を実行するため」に決断したものです。上場を維持していると、株主からの短期的な利益還元(配当など)への圧力がかかり、大胆な未来への投資がしにくくなる側面があります。経営陣は、あえて非公開化することで、腰を据えた改革を断行する道を選んだのです。

上場廃止の目的と経営の迅速化

上場廃止の最大の目的は、中長期的な企業価値の向上にあります。日成ビルド工業は、主力事業であるシステム建築や立体駐車場事業において、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や、生産設備の増強、新規事業への投資といった大きな課題に直面していました。これらの施策は、実行してもすぐに利益として表れるとは限らず、むしろ一時的にコストが増加する可能性もあります。

上場を廃止することで、株主の目を気にすることなく、これらの「未来への投資」を大胆かつ迅速に進めることができるようになります。また、株主総会などの対応コストが削減され、経営の意思決定スピードが格段に速くなるメリットもあります。MBOによる非公開化は、同社が次のステージへ成長するために必要な、戦略的な判断だったと言えるでしょう。

日成ビルド工業の将来性

上場廃止後の日成ビルド工業の将来性については、ポジティブな見方ができます。主力事業のシステム建築は、EC市場の拡大に伴う物流倉庫の需要増加や、工場の国内回帰といった流れを受けて、今後も安定した需要が見込まれます。また、都市部での駐車場不足を背景に、立体駐車場事業も堅調に推移するでしょう。

非公開化によって得られた経営の自由度を活かし、生産プロセスのDX化や、環境配慮型の新製品開発(例:太陽光発電設備の設置に適した屋根など)を加速させることができれば、競合他社との差別化がさらに進みます。短期的な業績に一喜一憂せず、中長期的な視点で事業基盤を強化している現在は、将来の更なる飛躍に向けた「助走期間」と言えるかもしれません。堅実な事業基盤と戦略的な経営判断により、今後も業界内での存在感は高まっていくことが予想されます。

日成ビルド工業に関するよくある質問

日成ビルド工業のMBO後の株価はどうなりましたか?

MBOにより2022年4月に上場廃止となったため、現在は証券取引所での株価は存在しません。株式はMBOを実施した経営陣(および協力した投資ファンドなど)が保有しています。

日成ビルド工業の競合他社はどこですか?

システム建築の分野では、大和ハウス工業(ダイワスペース)や横河システム建築、JFEシビルなどが主な競合相手となります。立体駐車場分野でも、いくつかの専門メーカーと競合しています。

転職や新卒採用は現在も行っていますか?

はい、上場廃止後も事業は継続しており、会社の公式サイトなどを通じて技術職(設計、施工管理)や営業職を中心に採用活動を積極的に行っています。

まとめ

日成ビルド工業は、「システム建築」と「立体駐車場」を二本柱とする大手メーカーです。工場や倉庫の建設で求められる「工期短縮」「高品質」「コストパフォーマンス」を実現する技術力で、高い評価を得ています。

働き方に関しては、部署によって差があるものの、平均年収は建設業界として標準的な水準を維持していました。2022年にMBOによる上場廃止を選択しましたが、これは短期的な業績に捉われない中長期的な経営改革(DX推進や新規投資など)を迅速に進めるための戦略的な判断です。安定した事業基盤と経営の自由度を活かし、今後も堅調な成長が期待される企業と言えるでしょう。